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フィンランドから鎌倉へ。暮らし、旅、映画にまつわる日々のメモ

40. 『幸せなひとりぼっち』新宿シネマカリテ

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今年の映画初めは、スウェーデン映画のこちらの作品。
チラシのデザインに惹かれて、はるばる新宿まで観に行ってきました。ちょうどサービスデーで満席!
 
たったひとりの良き理解者だった奥さんに先立たれ、近隣からは変わり者として厄介がられている、偏屈なおじいさんの物語。
 
悲しいことが重なって、見捨てられたようなきもちになっても、
そっとしておいてくれるわけでも、急にしあわせがおとずれるわけでも、ありません。
 
でも、いろいろなことが忙しなくやってくるなかで、
そこには新しい風も吹いてくることを、この作品は教えてくれました。
 
人にやさしさや思いやりを伝える術を知らない不器用なおじいさん。
だからこそ、子どもたちや動物にやさしくする姿がとってもピュアに映り、切ないきもちでいっぱいになりました。
 
すこしばかりお騒がせでも、
あんな風にご近所さんたちから愛される老後がおくれたら、とってもしあわせだろうな。

39. ドーナツはべつばら

金曜日の夕暮れどき、
夜ごはんの買いもの帰りについつい寄ってしまうお店があります。
 
若宮大路から鎌倉女学院の角を曲がって、材木座の住宅地をすこしばかり歩くと、すらりとしたアパートの1階。
おやつどきの小腹をしあわせに満たしてくれるドーナツ屋さんです。
 
その名も、べつばらドーナツ。
営業は、金、土、日、月の週4日だけ。
毎日やってるわけではないから、お店の前に看板がでていると、もう週末がやってきたんだな、という気分になります。
 
ガラス張りの引き戸をあけると、ほわぁ~んと、ドーナツのやさしい甘い匂いに包まれます。
 
ショーケースには6種類ほどのドーナツがお皿にこんもり。
レモンや、シナモン、コーヒーなど、定番メニューのほかに、ココナッツ、アップルシナモン、ラズベリーなど、季節ごとのメニューも華やかです。1つ250円。
 
ひとつひとつがわりと立派なおおきさなので、
初めてのときは、これ食べきれるかな?と思い、2人で1つレモン味のドーナツを買いました。
 
ところが、ひとくち口にしてみて、びっくり。
ドーナツと聞いて、想像する、油っこさや、ずっしりつまった感じではなく、
まるでシフォンケーキのようなふわふわ感と、ハワイのマラサダにも似たもっちり感があいまって、絶妙なもちふわ食感に、あっとゆうまにぺろり。甘さもちょうどいい。なんて軽やかな、ドーナツ体験。
 
次からは、1人1つずつ買うようになりました。
 
いろいろ食べてみたけれど、今のところ、レモンがいちばんのお気に入りです。

38. 年の瀬

おだやかで、心地いい時間が過ぎているようで、
今年もまた大きな変化や、おもしろい人たちとの出会いのある年でした。
 
フィンランドから、鎌倉に引っ越し、
海と山にかこまれた暮らしをはじめました。
 
都会のマンションで育ったわたしにとって、
鎌倉の暮らしは、すてきなことも、不便なところも、
いろんな意味でカルチャーショックがたくさんありました。
 
海まで徒歩5分で行けたり、お庭のある家に住んで、野菜を育ててみたり、
スーパーではなく商店街のお店や市場でおいしい食材が手に入ったり、
道ゆく人にあいさつをしたり、お役所の人たちの感じのよさにほっこりしたり。
 
ゴミの分別が細かったり、虫退治におわれたり、どこに行くにも遠くてげんなりしたり、梅雨の季節には、おしゃれな木のかごにカビが生えてしまったり。
 
おなじ日本でも、
まるでちがう国に来たかのような、文化や暮らしのちがいに、日々発見です。
 
東京から離れてみたことで、
まわりからどんなふうに東京が映るのか、
すこしヨソモノの目で、東京という街の独特さにも、気がつくことができました。
 
まだまだ始まったばかりの、自分たちの暮らしづくり。
来年は、どんな風向きで、きもちがかたむいていくのかな。
たのしみです。

37. 北鎌倉とフランス語

鎌倉の暮らしが落ち着いてきたら、やりたいと思っていたこと。
いくつかあるなかのひとつがフランス語でした。
 
大学で仏文科を専攻して、交換留学もしたのに、
いつのまにか遠のいてしまっているフランス語。
 
数年にいちど、パリの友人に会いに旅行にいくときに、
久しぶりに話してはすこしだけ感覚をとりもどして、また遠のいて。
そのくりかえしを、もう何回やってきたんだろう。
 
それでも、何回でも、またやろうと思えることって、そんなにない。
飽き性のわたしにはフランス語くらいです。
 
5才のとき、はじめての海外経験がフランスのパリだったこともあって、
幼い頃の理由のない「好き」を心にそっと、いくつになってももっています。
 
そして先週、ウェブサイトを見つけた
北鎌倉のフランス語の体験レッスンに行ってきました。
 
「かまくらアトリエアルノー」
 
先生はフランス人のおじさまで、奥さまが日本人。
北鎌倉の駅から徒歩15分ほど歩いて、小高い坂や細い小路をくぐりぬけたところにあるご自宅での個人レッスンです。
 
もともとフランスで高校の美術の先生をしていて、
その後、外国人にフランス語を教える仕事をしてきたそうで、鎌倉の自然のなかで子どもたちにアートと遊びを体験させるというおもしろいクラスもあるんです。
子どもがいたら、こうゆうのすごく楽しいだろうな、とわくわく。
 
会話のレッスンも、勉強の目的や、レベルや気分にあわせて、
色々とわがままを叶えてくれそうで、楽しい授業だったので、
さっそく来月から月に2回だけ通ってみることにしました。
 
じつは、北鎌倉にはほとんど来たことがなく、
円覚寺周辺や鎌倉までの街道しか歩いたこともありませんでした。
 
先生のお家に向かう途中、坂をのぼりきったところで、うしろをふりかえると、
向かいの山の紅葉がちょうど色づきはじめ。
赤やオレンジ、深緑など、色とりどりの山の眺めがとってもきれいで、うっとりしてしまいました。
 
鎌倉もわりあいと自然が多いところですが、
北鎌倉の先生のご自宅のエリアは、どのお家にも木々やお庭があって、
お花がきれいに咲く季節には、歩くだけで楽しい気分になりそうな、すてきな界隈でした。
 
また今度、ゆっくり散策してみようと思います。

36. 『永い言い訳』横浜ブルク

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いつだったか、映画のパンフレットかなにかで西川美和監督のインタビューを読んだとき、「嘘」に興味がある、というような内容のことが書かれていて、ものすごく印象的だったのを覚えています。
 
人が嘘をつくときには、何かしらのドラマがある。
だから、嘘をテーマにした映画を撮るのだと。
 
嘘はきらい、とかんたんに人は言うけれど、
ちいさな嘘のひとつ、ふたつもつかずに、暮らしていくこともなかなかむずかしい。
 
外国の友だちに、日本人の”建前”はきらいだと言われると、ほんとうにそのとおりで、めんどくさい文化だなと思いながらも、少なからずの建前(ちいさな噓)を、わたしもふだんあまり意識もせずに使ってしまっているのだと思います。
 
じゃあ、嘘をつくときって、どんなときなんだろう。
どうして嘘をつかなくてはいけなかったんだろう。嘘をつくことって、そんなに悪いことなの?
 
『蛇苺』からはじまり、『ゆれる』『 ディアドクター』『夢売るふたり』と、これまでさまざまな人生の”わけある嘘”と、それをめぐる人間の心模様を描いてきた西川美和監督。最新作の『永い言い訳』もまた、嘘とは何か、真実とは何か、を問う類の作品です。
 
ある日突然亡くなった人が、
悲しみも、感謝も、すなおに感情表現ができないほど、
複雑に絡まって、やりきれない想いが残る相手だったなら…。
 
もっくんの演技が、表情が、とにかく心に染みました。
深津絵里さんも、年を重ねるごとに深みが増して、美しい人だなとあらためて思いました。
 
遺されたものどうしで育まれていく絆が
けっして大袈裟ではなく、ただそこにあるものとして映し出されていて、
不器用ながらに、わずかな希望もあるような、
そんな誠実な描き方にとても好感をもちました。
 
西川美和さん。
今いちばん新作が待ち遠しい監督のひとりです。