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フィンランドから鎌倉へ。暮らし、旅、映画にまつわる日々のメモ

64. 『バッド・ジーニアス』新宿武蔵野館

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映画好きの友だちに「最近でダントツおもしろかった!」と絶賛されて、あわてて見に行ったのが、こちらのタイ映画。
 
高校生のカンニングのストーリーで、手汗が出るけど、とにかくおもしろい、という前情報だけをたよりに、新宿武蔵野館に行ってきました。
 
数年ぶりに行ったら、あの武蔵野館がリニューアルして、ずいぶんきれいになっていてびっくり!そして、もうすぐ終わっちゃうから、わたしのように駆け込みで見にきた人たちがたくさんいて、平日のお昼間だったのに満席でした。なんだか、うれしい。
 
あらすじは、タイの有名進学校に転入した天才女子高生のリンが、初めての友人であり、女優を目指すグレースのテストを手伝ったことがきっかけで、グレースの彼氏のパッドから、あるビジネスを持ちかけられます。それが、テストの答えをお金で売るというもの。貧しい父子家庭で育ったリンは、親を苦労させないだけのお金を、裕福な家庭に育ち勉強が苦手なグレースやパッドは、親を安心させる成績が欲しかったのです。
 
カンニングのよい方法を思いつき、グレースとパットを中心に、リンの“お客さん”は続々と増え、生徒たちは成績があがるなか、最後の難関として待ち受けていたのが、アメリカの大学に留学するために世界各国で行われる大学統一入試「STIC」でした。世界規模のプロジェクトに挑むリンたちは果たして…!
 
 
見終わった後、「おもしろかったーーー!!!」と思わず叫びたくなるほど、すごく良くできている映画だなと思いました。監督や俳優さんや制作チームに拍手をおくりたい。手汗をかきながら、ハラハラしっぱなしの2時間10分でした。
 
とにかくテンポがよくて、『ミッション・インポッシブル』のような爽快なアトラクションのような映画でありながら、背景には、タイの学歴社会や受験戦争、貧困という社会問題が描かれていたのが印象的。全体としてはスリリングな楽しさがあって、でも、深いメッセージがしっかり伝わってくるドラマなのです。
 
個人的には、リンのお父さん役に助演賞をあげたい。
 
娘がわるいことをしてしまったとき、まちがってしまったとき、それでも温かく包み込んでくれる、お父さんの愛の深さに、ホロリとしてしまいました。
 
お父さんがいたから、きっとリンも自分のことを許せたんだろうなと思います。

63. 『悲しみに、こんにちは』シネコヤ

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この夏、はじめて映画のタイトルを見たとき「あれ?」と思いました。
フランソワーズ・サガン原作の「悲しみよ こんにちは」ととてもよく似ているので、リメイクかなと思ったのです。でも、まったく別もののスペイン映画でした。
 
英題は「Summer 1993」。スペインのカタルーニャ地方の田舎町を舞台にした、少女のひと夏の物語です。
 
映画館で上映されていたとき、気になっていたものの見逃してしまっていた本作を、藤沢のシネコヤでやっと見ることができました。
 
物語は、主人公のフリダの母の喪中から始まります。ある病気で母を亡くしたばかりのフリダは、生まれ育ったバルセロナの街を離れ、自然豊かな田舎町に住んでいる叔父の家族と一緒に暮らすことに。従姉妹でまだ幼いアナは、フリダを姉のように慕い、叔父夫婦もフリダを温かく迎えてくれますが、フリダはなかなか素直になれず、彼らと心を打ち解けられるまでには、時間がかかるのでした…。
 
まるで、トリュフォーの『大人は判ってくれない』の少女版!
子どもと少女のはざまくらいの、繊細でみずみずしい感性がていねいに描かれていて、カタルーニャの田舎の景色も美しくて、とても贅沢な映画でした。個人的にも、とっても好きなタイプの映画。
 
本作がデビューで、ベルリン映画祭をはじめ、世界の映画祭で新人監督賞などに輝いたカルラ・シモン監督の、自身の子どもの頃の体験がもとになっているのだそう。監督の自伝というだけあり、フリダの心がとてもリアルに描かれていました。
 
叔父夫婦がやさしい人たちなのはわかっていても、かまってほしくて、困らせてしまったり、従姉妹のアナはとっても愛らしいのに、お母さんのいない寂しさから、いじわるしちゃったり…。
 
フリダの淋しさや、戸惑いや、苛立ちが、まっすぐに伝わってきて、なんだか昔の自分を見ているようでした。少女の心に、ただただ共感。
  
こんな小さな宝もののような映画に出会えて、よかったです。

62. この夏、カナダに恋をした。

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今年の6月に、1週間カナダに行ってきました。
あっという間に半年近くがたちますが、自分にとってものすごく色濃い時間だったので、忘れないように書き残しておきます。
 
あの心地よさは何だったんだろう。
とにかく、カナダが大好きになって帰ってきたのです。
 
語学留学をしている夫の妹をたずねて、初夏のバンクーバーへ。
ついでに、ずっと行ってみたかったフランス語圏のモントリオールにも、足を伸ばしてきました。
 
夫の妹と、夫なしでの姉妹旅行。そんなことが気軽にできる間柄なのがうれしい。
 
私にとって、今回は2度目のカナダ。
50歳を過ぎてからカナダを気に入って移住して、ずいぶん年の離れたボーイフレンドと暮らしていた大叔母さんを訪ねて来たのが高校生のころだったので、15年ぶりくらいのバンクーバーでした。
 
モントリオール3泊、バンクーバー4泊の旅。
そのなかで、いちばんの発見は、カナダ人のオーガニック思考の高さと、豊かな自然と町のほどよい距離感。そして、自然体で生きていて、とっても気持ちのいい人々でした。
 

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”北米のパリ”とも呼ばれるモントリオールは、ヨーロッパの街並みと少し似ていて、オランダを思わせるレンガの建物や、フランスのマレ地区のような、アートギャラリーやカフェが並ぶ界隈もあり、とっても好きなタイプの町でした。
 

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街のあちらこちらに市民参加型のコミュニティ菜園が。

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西海岸のバンクーバーは、ダウンタウン超高層ビルと、ノースバンクーバーの山景色が、セットで近距離で見られるというのが、すごく新鮮な体験でした。雄大な自然のなかに、高層ビルの島がぽつんと浮かんでいるようで、あまり見慣れない風景でした。
 
でも、ダウンタウンを離れると、バンクーバーの人たちの暮らしが感じられるローカルな界隈があちこちに。緑豊かな公園も多く、きっとバンクーバーに住んでいる人たちは、都心の高層ビルに通勤している人たちも、自然とともに生きているという実感があるんだろうな。

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食いしん坊のわたしにって、旅行の前に唯一気がかりだったのがカナダの食文化。
多民族国家といっても、カナダ料理のイメージがまったくなく、食べものにはあまり期待していませんでした。
 
ところが、地産地消の文化や環境にやさしい漁法が浸透していたり、オーガニックのスーパーやマルシェが充実していたり、フレッシュでおいしい材料を使ったローカルフードがたくさん食べられたのです。
 
今風のおしゃれなレストランでも、必ずといっていいほどベジタリアンメニューがあり、グルテンフリーのマークもしっかり記載されていたのも印象的。しかも、お肉を使った料理に負けないボリュームとおなかの満足感なのでした。
 
バンクーバーのいちおしは、地元の人に教えてもらった「GRUB」。こじんまりしたアットホームな雰囲気で、料理もおいしくて、すてきなお店でした。

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そして、もうひとつ、今回のカナダの旅行が特別なものになったのは、
Airbnbのステイをとおして、カナダのすてきなご夫婦と知り合えたこと。
 
ちょっとしたハプニングがあり、バンクーバーに着いてから宿を探すことになり、泣きそうになりながら見つけたのが、彼らの家でした。
 
当日リクエストを送るという緊急ぶりでも、心よく受け入れをしてくれて、旦那さん手づくりの夜ごはんまでご一緒させてもらいました。たまたま、奥さんが子ども時代に日本に住んでいたことがあり、ふたりとも親日家だったのです。おふたりとも旅やアートが好きという共通点があったのもうれしい偶然でした。
 
こんな風に、旅先での思わぬ出会いはとってもうれしい。大切にしたいご縁です。


 
大叔母さんが気に入って住み着いた場所。
懐が広くて、やさしい風が吹く、気持ちのいい街。
 
この街だったら、私も暮らせるような気がしました。

61. 鵠沼の小さな街の映画館、シネコヤ

人生でたった1度だけ、ひとり暮らしをしたとき、
部屋の広さよりも、駅の近さよりも、何よりもわたしが重視したのは、
「大好きな映画館のある街」でした。
 
昔から小さな映画館がもつ独特の雰囲気や、個性が好きで、
映画はできるだけ映画館で見るようにしています。
 
鎌倉に住んで3年目。
住めば住むほど、この街ののんびりした空気や居心地のよさ、
この街にいる人たちが好きになっていく一方で、
ときどき、無性に東京が恋しくなるのは
ずいぶん通ったお気に入りのミニシアターたちが遠くなってしまったから。
 
行けない距離ではなくても、片道1時間半と思うと、
近くのシネコンで見られる映画や、レンタルでもいいかなと思ってしまう
めんどくさかり屋のわたしです。
 
でも、そんなわたしのドンピシャな映画館が、
湘南エリアにもあったのです!!!
鵠沼海岸駅から徒歩3分のところに、昨年春オープンした
映画と本とパンのお店「シネコヤ」。
 
鵠沼海岸に新しいミニシアターができたという噂は
ずっと前に聞いて、上映作品もちょくちょく調べていたものの、
なかなか都合があわず、ようやく行くことができました。
 
映画館とは言わずに、”映画と本とパンのお店”としているとおり、
1階はカフェスペースになっていて、そのときどきでコラボしているお店のパンを販売、2階にあがると、ソファーでゆったりと映画が見られる空間に。
さらに、1階、2階ともに、壁一面が本棚になっていて、小説や絵本、映画の本などがずらりと並んでいて、自由に読めるようになっているのです。
 
渋谷のアップリンクや、逗子のシネマアミーゴのような、自由なスタイルの映画空間でありながら、待ち時間にはおともの本とおいしいパンをたのしめて、しかも、ふかふかのソファー!個人的にはうれしいことづくしでした。
 
チケットの番号順にひとりずつ、2階に案内されて席を選べるシステムなので、
スタッフの方ともお話ができて、今どきめずらしいくらいにアットホームな雰囲気もすてき。
 
作品のラインナップも、下高井戸シネマシネスイッチ銀座のような作品が中心で、湘南のお気に入りスポット、かなり上の方に入りそうです◎
 
いいとこ、見ーつけた。

60. 『グレイテスト・ショーマン』

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もうずいぶん前になりますが、久しぶりにIMAXの映画館に2回見に行くほど、大好きだった『グレイテスト・ショーマン』(その後、飛行機で3回目も見ました)。
観てからしばらく経ちますが、サントラを聴くと、あの感動とワクワクがすぐに蘇ってきます。
 
日本でも大ヒットしたミュージカル映画ラ・ラ・ランド』の製作チームが手がけた、ヒュー・ジャックマンを主演に迎えた本作。アメリカのショービジネスの原点を生み出した実在の人物、P.T.バーナムをモデルにした感動のエンターテイメント!
 
 
舞台は19世紀半ばのアメリカ。ヒュー・ジャックマン演じる主人公バーナムと、ヒロイン役のミシェル・ウィリアムズ演じるトリニティの子ども時代から。貧しい仕立屋の息子だったバーナムと、裕福な家庭の一人娘のトリニティは、まったく違う世界に生きながらもバーナムの豊かな想像力とユーモアによってふたりは心を通わせていた。やがて大人になって結婚して、ふたりの娘たちと小さな古アパートに暮らすように。
 
ある日バーナムの会社が倒産し、仕事がなくなってしまったことから、子どもの頃の夢だったイマジネーションを使って人を楽しませたいという想いがバーナムの中で蘇り、大きな賭けに出る。バーナムが目をつけたのは、ひげ女や小人、巨人などの、スペシャルな外見をもつマイノリティの人たちだった。そして、挑戦と失敗を繰り返しながら、ショーを成功させていくのだが…。
 
 
始まりから終わりまで、ワクワクが止まらない、あっという間の90分!
感動も、笑顔と、涙と、とにかく胸いっぱいのフィナーレで、この映画自体が素晴らしいショーになっているし、こういう映画をみると、ああ、やっぱり映画があってよかったな、映画は映画館で見るものだなぁ、とつくづく思います。
 
この映画のみどころは、壮大でロマンチックな歌とダンスシーン、そしてヒュー・ジャックマン演じる主人公のP.T.バーナム。
 
貧しい生まれの主人公バーナムが挑戦と失敗を重ねながらも夢に向かってすすんでいくという、わりとシンプルなサクセスストーリーではあるものの、バーナムは単なる心優しいいい人というわけではありません。
 
銀行に偽って海底に沈んでいる船を担保に大金を借りちゃったりします。フリークスと呼ばれる人たちに目をつけたのも、新しくてワクワクすることをしたいという気持ちからで、都合がわるいときには平気で彼らを隠そうともする。ショーが成功するようになると、もっと欲が出てしまって、自分にとっていちばん大切な存在を一瞬見失ってしまいます。
 
そんな調子なので、ときどき失敗をして落ち込んだりもするんだけど、それでもそんなバーナムのことを好きな人たちが集まってくる。うんざりされたり、いやなやつで終わらないのはやっぱり彼自身と、彼のつくりだす世界にものすごく魅力があったからだと思うのです。
 
壮大なエンターテイメントに胸が高なりながら、バーナムに心惹かれた作品でした。
 
「Celebration of Humanity(人類の祝祭)」
すべての人を同じように扱ったバーナムのサーカスへの賞賛の言葉が印象的。
 
ひとりひとり、みんなちがって、それでいい。 
もっともっと、やさしい社会になるといいなぁ。