uzocotrip

フィンランドから鎌倉へ。暮らし、旅、映画にまつわる日々のメモ

33. 『キネマの神様』原田マハ

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原田マハさんの本をはじめて読みました。
「映画の仕事をしてる、あゆみという名前の主人公のおはなし。まぁ、読んでみて。」とすすめられて、手にとった本です。
 
中学生のころから映画が好きで、
年に何百本というほど、数でいったら、とても自慢できるほどではないけれど、
いろんな国の、いろんな映画を見て、こころのなかに
たくさんのちいさな宝物として、のこしていきました。
 
わたしにとって、映画は、自分の行ったことのない、
世界中のいろんな国のことを教えてくれるもの。
自分と世界をつなげてくれるもの。
いつだって、思っている以上に、自分の知らない世界は広がっていて、
いろんな人生がある。
そのことに、いつも勇気づけられてきました。
 
映画館でもぎりのアルバイトをしたこともありました。
映画館でスクリーンの向こうの世界にいってしまえるほど、
どっぷり浸かる時間は、いつだってものすごくしあわせで、
学生の頃は、平日の朝のがらがらの映画館でドまんなかに座って、
まるで映画館を独り占めしているかのような、大きなきもちになるのが好きでした。
 
大きいスクリーンで、迫力満点の映画をだれかと見るのも楽しいけれど、
個性のある、街の映画館は、何倍も愛おしい。
 
だから、大好き映画館が閉まることになったときには、
ものすごくショックで、最終上映日にもかけつけて、
館長さんのあいさつに涙しながら見届けることもありました。
 
原田マハさんの小説は、まるでそんなすこし前の自分をふり返っているようで、
しばしのあいだ、映画との幸福な思い出に浸る贅沢をいただきました。
 
映画館には、キネマの神様が、きっといる。
わたしもそう信じているひとりです。