uzocotrip

フィンランドから鎌倉へ。暮らし、旅、映画にまつわる日々のメモ

46. 『彼らが本気で編むときは、』

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生田斗真さんが主演。トランスジェンダーの女性とそのパートナーの暮らしを中心に、いろんな家族愛が描かれる人間ドラマ。
 
トランスジェンダーの映画といえば、数年前のグザヴィエ・ドラン監督の『わたしはロランス』が記憶に新しいけれど、邦画ではめずらしい。だから、監督が『かもめ食堂』『めがね』の荻上直子さんと聞いて、そのイメージのギャップにすっかり期待度があがってしまいました。
 

ふつうってなんだろう? 異常ってなに? 親になることって、どういうこと?
この映画を見ながら、ぐるぐると頭の中でいろんな愛のかたちを考えていました。
 
からだの性とこころの性がちがうこと、
同性を好きになること、
異性も同性も好きになること、
 
それは、さわぎたてるほど特別なことでも、
隠さなきゃいけないほど後ろめたいことでもないのに、
日本の社会だとちょっとむずかしい。
 
でも、この映画を見ていると、劇中にでてくる身勝手な母親たちよりもずっと、 リンコさんの方がよっぽどふつうの感覚で、人としてのやさしさと愛に溢れているように感じてきます。
 
心の綺麗さが、こんなにも外見に現れるものなんだ、とハッとさせられるほど、 生田さん演じるリンコさんが美しい。
 
本作のインスピレーションとなっているのは、荻上監督自身のアメリカ生活での体験。それもあって、LGBTの人たちの心情がとってもリアルで、繊細に描かれています。
 
トランスジェンダーを主題にしつつ、
自分の価値観を子どもにも押しつけようとする親や、
母親としての責任からたまに逃避してしまうシングルマザー、
トランスジェンダーの娘を、誰よりも大きな愛でうけとめる母親など、
いろんな「お母さん」が描かれる作品でもあります。
 
スペシャルなようで、どこにでも起こりうること。
きっと見る前よりも、見終わった後、人にやさしくしたいと思える、そんな映画です。