uzocotrip

フィンランドから鎌倉へ。暮らし、旅、映画にまつわる日々のメモ

73. 『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』109シネマズ湘南

f:id:uzocoya:20200618143423j:plain
 
夫くんが、子どもを連れて昼から飲み会に出かけたので、3か月ぶりに映画館を解禁!
『フランシス・ハ』以来、すっかり友だちのような親しみを感じるグレダ・ガーウィグが監督・脚本を手がけた、こちらの映画を見てきました。
 
19世紀後半に書かれたルイーザ・メイ・オルコットの自伝的小説『若草物語』を原作にしたもの。南北戦争時代のアメリカで、父親は従軍医師として出征し、母親のもとで暮らすマーチ家の四姉妹の物語。
 
結婚が幸せと信じる長女・メグ。ピアノを愛する心優しい三女・ベス。お金持ちに憧れる末っ子のエイミー。そして、作者の分身でもある、作家志望で男勝りな次女・ジョー。映画では、四姉妹の少女時代と、大人になった彼女たちの現実が、織り合わさってスクリーンで描かれます。
 
お父さんの帰りを待つ、女だらけの家族の時間は、喧嘩もありながら、いつもにぎやかで、温もりあふれる雰囲気。
そして大人になった四姉妹は、それぞれの立場でしあわせも苦労もあって、悩みながらも少女時代の心を大切に、もがきながら今を生きていますーーー。
 
 
子どもの頃、アニメでやっていたのを家族で見ていたこともあり、私にとって懐かしい、温かな記憶がよみがえる「若草物語」。
大人になって、久しぶりにあの物語に出会ったからか、監督のグレダ・ガーウィグの脚本のおかげか、今回の映画版「若草物語」は、びっくりするほど感動してしまいました。
 
ウィットに富んで、猪突猛進で、ちょっと不器用で、最高にチャーミング!
ジョン・マーチを愛さずにはいられません。
 
四姉妹の仲の良さ、家族の温かさ、困っている人を助けようとする慈悲の心など、ベースには、すごく道徳的なピューリタンの家族の暮らしが描かれているのですが、主題は「自分らしく生きたい」と願う女性たちの物語です。
 
監督のグレダ・ガーウィグは、幼い頃から原作が大好きで、ジョーに憧れて、人生のロールモデルにしてきたというほど、この物語の大ファン。「これまでのどの監督作よりも自伝的な作品」だと、思い入れの強さを語っていますが、実際に、映画を見ていると、おそらくグレダが書き足したであろうセリフの数々にぐっとくるんです。
 
ジョーを演じたシアーシャ・ローナンと、ローリーを演じたティモシー・シャラメは、監督の前作『レディ・バード』でも共演。
 
抜群のセンスで、150年間愛されたきた物語をあたらしく、おしゃれで楽しい、共感せずにはいられない作品にしあげてくれました。
 
こんな映画が今、見たかったんだ!

72. ミニシアターのために、今できること

vol. 72 わたしがミニシアターで映画を見る理由

10代、20代と、たくさんの時間を映画館で過ごしました。
 
落ち込んでいるとき、
やり場のない気持ちを抱えているとき、
いつもひっそりと映画館に行って
気分を晴らしていました。
 
映画を見ていると、不思議なことに
まったくかけ離れた世界の物語なのに、
登場人物に、自分の一部を重ねたり、
友だちのように思えてくることがあります。
 
だから、遠くの国に景色に憧れたり、
思いっきり泣いて、笑ったり、
いろんな人のやさしさや悲しみに共感したり、
たまには、まわり道もわるくないと思えたり。
この世界のいろんなかたちの小さな光を見せてくれるのが、映画でした。
 
 
私のミニシアターの原体験として、とくに記憶に残っているのは
中学生の時に、渋谷のBunkamuraル・シネマで見た
初恋のきた道』と『リトル・ダンサー』です。
 
物語としてもすごく惹かれたのと、
映画の舞台が、『初恋のきた道』は中国の田舎の小さな村で、
リトル・ダンサー』はイギリスの炭鉱町。
どちらも、中学生の私にとっては遠い世界で、
自分とほとんど変わらない年齢の主人公がたくましく生きる姿に、
当時ものすごく感動したことを覚えています。
 
箱入り娘だった私の、
小さな世界が少しだけ広がった瞬間でした。
 
 
中学生の頃、親しい友人の影響で
映画に夢中になってから、
中学、高校、大学、社会人と
映画館は、わたしの暮らしの一部になっています。
 
思い出の映画は、数え切れないほどあるけれど、
その話はまた今度。
 
とくに、東京のミニシアターは、
あちこち足を伸ばして行きました。
 
 
大好きな映画館はいくつもありますが、
私の中で、思い出の映画館といえば、
吉祥寺のサンロード商店街のはずれにあった、
吉祥寺バウスシアター
 
爆音映画祭というイベントで有名で、
メジャーな作品からアート系のインディーズ映画まで、
洋画も邦画も、幅広いラインナップで愛されていた街の映画館です。
 
夕方になると赤く点灯する「BAUS TOWN」のネオンサインが印象的で、
その一角だけ時が止まったかのような、レトロな建物の2階にありました。
 
シネコンが増えていって、
巨大なスクリーンで映画が見れたり、
映像や音響の技術がどんどん進んでいっても、
やっぱり、またバウスで見たい。
そんな風に思える、居心地のよさがありました。
 
大小のスクリーンが3つ。
チケットは、番号順の自由席だから、
少し早めに行って、その日の気分で座席を選んだり、
映画の余韻に浸りながらサンロードを歩く、
吉祥寺駅までの帰り道も好きでした。
 
たまに油断して上映時間ぎりぎりに行くと
すごく後ろの方の番号だったりして。ありゃー。
座席指定制が普及した今では考えられないけれど、
そんなアナログなところも、けっこう好きでした。
 
他にも、今はなき、渋谷のシネマライズや、
昔の恵比寿ガーデンシネマもファンでした。
 
 
小さな街の映画館の、独特のマニアックさが好きで、
劇場スタッフがこだわってつくる宣伝の切り抜きとか、
もぎりの呼びかける声とか、
また次来るのが楽しみになる、ポップでおしゃれな映画のチラシとか、
ポップコーンの匂いとか、時には、おじいさんのいびきとか。笑
もう、愛しかありません。
 
 
おしゃれなものに溢れていて、
新しくてかっこいいものが次々と出てくる東京の街で、
そんな都会っぽさも飽きなくて楽しいけれど、
いつ来ても、ゆったりとした時間が流れていて、心がほっとする場所。
ずっと変わらずに、そこにあって欲しいもの。
それが、私にとっては街の映画館です。
 
いろんなことがあっても、
映画館で映画をみると、
「まあまあ、ぼちぼちいこうよ」とやさしく肩をたたいてくれるような、
そんな気持ちになって、癒やされるのです。
 
 
それが今、新型コロナウィルスのために、
全国のミニシアターが
休館や閉館のピンチになっています。
 
あんなに愛のある場所が、
もうこれ以上なくなって欲しくない。
 
小さな街の映画館で映画を見るひとときは、
他の何ものにも代えられません。
 
文章を書くことくらいしかできない私が
映画のために何かできないかなと
悶々とする日々ですが、
せめてもの思いで、リンクを貼ります。
 
どうか、映画とミニシアターに
明るい未来が待っていますように。
 
 
濱口竜介監督、深田晃司監督が立ち上げた、
全国の小さな街の映画館を応援するクラウドファンディング
5/14(木)まで募集中です

motion-gallery.net
 ▼ 他にも、映画館ごとの支援方法(会員募集、Tシャツ販売など)を入江悠監督がブログでまとめてくださっています

irie-yu.com
 ▼ 若手俳優さんたちが手がけるミニシアター支援・寄付Tシャツ!
とってもおしゃれで、私も買いました〜

suzuri.jp

71. パリ郊外で、ベランダ越しのミニコンサート

慣らし保育がはじまって、
わずか3日でお休みになったおチビさん。
夫も先月からずっと在宅勤務なので、
3人で家で過ごす生活が、もうしばらく続くことになりました。
 
もともとフリーランスで働く私は
仕事を再開しようと思ったとたんに
ストップがかけられたような、
すこし拍子抜けするような気持ちもありますが、
今はのんびりできることが、ありがたい。
 
子どものとなりで、お菓子を焼いたり、
フランス語の絵本を読んだり、
時間がゆっくりと流れてる今だからこそできること、
やりたかったことを、もくもくと楽しんでいます。
 
 
先日、フランス語の先生から教えてもらった、心温まるニュース
 
先月下旬から外出禁止令がでてる
フランスのパリ郊外のモントルイユという街で、
コンサートが中止になったミュージシャンたちによる、
バルコニーでのミニライブが連日行なわれているのです。
 
毎日夜8時になると、医療従事者や患者さんたちへのエールをこめて、
誰から始めるともなく、拍手をするひとときがあるのですが、
その拍手が終わると、15分ほどの小さな演奏会のはじまり。
 
ギターの弾き語りだったり、ヴァイオリンの演奏だったり、
トランペットに、アコーディオンなども。
プロもアマチュアも関係なく、
市内在住の様々なミュージシャンたちが
日替わりでミニライブを行っています。
 
そんな夜のひととき、
想像するだけでうっとりしてきませんか。
 
さらに、素晴らしいのが、
この小さな音楽祭を市が独自で主催していて、
ミュージシャンたちに出演料を払っているのだそう。
ただでさえ収入が不安定なアーティストたち。
今のような、特別な状況で、仕事がなくなったり
生活が苦しくなるだろう人たちのために、
市長が率先して、こういう機会をつくってくれるなんて
なんてすてきな取り組みなんだろう。
 
 
毎日のミニライブ(#Musique au Balcon)の映像は、
モントルイユ市のFacebookページからも見られます♪

70. 8ヶ月の子育てを経て

f:id:uzocoya:20200412184435j:plain


こんなときだから、久しぶりの雑記。
 
生まれて初めての妊娠・出産をして、
ママ1年生になってみて、
初めてのことだらけのなか、あっという間の8カ月を過ごしました。
 
子どもみたいな私が、
ある日とつぜん、ちいさな赤ちゃんのお世話をする「おかあさん」になって、
おっぱいをあげて、抱っこをして、オムツを替えるだけの、ぐっすりと眠れない日々がしばらく続きました。
 
体力のない私は、産後の回復もゆっくり、ゆっくりで、
ふにゃふにゃのちいさなからだで一生懸命に毎日を生きる子どものとなりで、ひぃひぃ、ヨレヨレ。心の底から、子育てが楽しいと思えるようになったのは、1カ月以上経ってからでした。
 
ただただ、見ているだけで、愛らしいと思ったり、
からだはきつくても、この小さなヒトのために、どうにかしてあげなくちゃと思えたり。子どもが生まれてみてからは、初めての感覚や感情ばかりです。
 
自分のことを、どちらかというと大らかで、のんびり屋だと思っていたけど、
「こんなに心が狭いんだ」と自分でも悲しくなるほど、
気持ちに余裕がないときも、いっぱいありました。
 
母になったら何か変わるものかと思ってたけど、
私という人間は、そんなに変わらないんだなというのも
この8カ月での実感でした。
 
そうそう。その間、
夫くんの絵に描いたような親バカっぷりに、何度も助けられました。
ものすごく自然に「パパ」になった彼は、
何かを我慢したり、諦めるのではなくて、
自分の世界に子どもを巻き込むようにして
子どもとの時間を楽しんでいるのです。
 
 
3カ月に首が座ってからは、寝返り、おすわり、離乳食、ずり這い…と、
着々と、成長をしている我が家のおじょうさん。
 
目が見えるようになって、手でものをつかめるようになって、
興味があるものがはっきりしてきて、
次第に、欲しいものを主張するようになってきました。
言葉を話すことこそできないものの、
あれが欲しい、これじゃ嫌だ、という意思を
しっかりと伝えるようになってきた。
 
そんなおチビをみていると、
お世話は大変だなぁとか、
かわいくてしあわせだなぁとか、
もっと大きな心をもっていられたらいいのに
こんなママでごめんよとか、
いろんな気持ちがあわさって複雑だけれど、
私もしゃんとしなきゃ!という気持ちになります。
 
でも、あんまり力まずに、50点のママでいいかな。
 
いくつになっても、娘のとなりで、ワクワク人生を楽しんでるお母さんでいたいよ。

69. 『真実』キノシネマ横浜みなとみらい

68. 『真実』キノシネマ横浜みなとみらい - uzocotrip

万引き家族』で2018年カンヌ国際映画祭のグランプリに輝いた是枝裕和監督、初の海外進出作品。
 
個人的に、超夢の豪華共演だった本作!
大好きな俳優を、大好きな監督が撮る。しかも、馴染みのある街を舞台に。
それだけでも、わたしにとって、贅沢な映画でした。
 
是枝監督が、フランス人の俳優を起用して、フランスを舞台の映画を撮ったら、どんな作品にしあがるんだろう。しかも、フランス映画界を代表する大女優のカトリーヌ・ドヌーヴと、同じくフランスの実力派女優としてキャリアの長いジュリエット・ビノシュが初共演!そこに、『ビフォア・サンセット』シリーズのイーサン・ホークも出るなんて。これは何としてでも、映画館で見よう、と決めていました。


物語の舞台はフランスのパリ。大女優ファビアンヌ(カトリーヌ・ドヌーブ)の家に、ニューヨークから娘家族が訪れます。『真実』というタイトルの、ファビアンヌの自伝書の出版を祝いにやって来たのです。しかし、彼女が本に書いたのは、真実とはかけ離れたものでした。母親に辛辣な眼差しを向ける娘のリュミール(ジュリエット・ビノシュ)と、役者の夫・ハンク(イーサン・ホーク)、愛娘シャルロット(クレモンティーヌグルニエ)。家族に隠された、本当の“真実”とはーー?
 
 
わぁ、さすがだなー、という感じでした。
 
大女優を演じるカトリーヌ・ドヌーヴの貫禄はさすがだったし(あの豹柄のコート似合いすぎ!)、母親との確執に苦悩するジュリエット・ビノシュも、軽やかなユーモアを交えながら、母娘のやりとりを見守るイーサン・ホークも、それぞれの俳優の個性がとてもすてきにいかされていて、ファンとしては「ごちそうさま」と言いたいくらい。
 
季節は秋の終わり。母と娘の確執という、重たい雰囲気になりがちなテーマ(しかもフランス映画)にもかかわらず、ほのかな幸福感と爽やかな余韻の残る映画にしあがっているのは、是枝作品の持ち味でもあるし、イーサン・ホークという俳優の存在が大きいように感じました。
 
黄色や橙色に染まるパリの秋。
ひんやりを頬をさす、冷たい朝の空気。
映画を見ながら、秋のパリに行った気分になれたのが、思わぬ幸福でした♩