uzocotrip

フィンランドから鎌倉へ。暮らし、旅、映画にまつわる日々のメモ

54. 『ブランカとギター弾き』シネスイッチ銀座

f:id:uzocoya:20170911142158j:plain

春くらいに劇場の予告編で、女の子が盲目のおじさんのギターにあわせて歌っている映像をみて、女の子とおじさんのほっこり心温まる旅ものがたりだろうと思って、ほんの甘い気持ちで映画館へ。 
 
映画祭のワールドシネマ部門とかで上映されそうな、エキゾチックな映像と音楽なのに、監督が日本人というのも気になっていました。
 
舞台はフィリピン・マニラのスラム街。
身寄りのないブランカは、他のスラムの子どもたちと同様に、観光客や大人たちからお金を盗んでは、食べものをもとめて、街をふらつき回る日々。拾ってきた布切れやガラクタで作った小さなおうちを寝床に、母親のいる生活を夢見ている。
 
ある日テレビで、女優が孤児を養子にしたというニュースを目にして、ブランカは、大人が子どもをお金で買えるなら、子どもだって”親”をお金で買えるはず!と思いつき、「母親買います!」という広告を街中に貼ってまわる。そんななか、盲目のギター弾きピーターと出会う。
 
はじめは、目の見えないのをいいことにピーターのお金を盗もうとしたブランカだが、ブランカを責め立てることもなく、どこまでもおだやかなピーターのやさしさに触れ、2人は一緒に母親探しの旅に出るーーー。
 
 
10歳にもならない、小さな子どもたちが、生きるために盗みやひったくりを当たり前にしているスラムの界隈。それはもうほとんどゲーム感覚のようで、ほんのいたずらのように悪いことをして暮している子どもたち。他に生きる術のない彼らの、彼らなりの必死な生き抜き方を目の当たりにして、胸がぎゅうっとなりました。
 
ほんの少し離れた場所では、同じ年頃の子どもたちが母親に手を繋がれていて、子どもらしい日々を送っているのに。
 
フィクションだけれど、この映画の世界はフィクションじゃない。スクリーンに映し出された映像は、現実にある世界だと思えば思うほど、切なく、悲しいものでした。
 
ゴミの山に生きる子どもたちの無邪気な笑顔や、
きらきらした瞳が忘れられません。