uzocotrip

フィンランドから鎌倉へ。暮らし、旅、映画にまつわる日々のメモ

63. 『悲しみに、こんにちは』シネコヤ

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この夏、はじめて映画のタイトルを見たとき「あれ?」と思いました。
フランソワーズ・サガン原作の「悲しみよ こんにちは」ととてもよく似ているので、リメイクかなと思ったのです。でも、まったく別もののスペイン映画でした。
 
英題は「Summer 1993」。スペインのカタルーニャ地方の田舎町を舞台にした、少女のひと夏の物語です。
 
映画館で上映されていたとき、気になっていたものの見逃してしまっていた本作を、藤沢のシネコヤでやっと見ることができました。
 
物語は、主人公のフリダの母の喪中から始まります。ある病気で母を亡くしたばかりのフリダは、生まれ育ったバルセロナの街を離れ、自然豊かな田舎町に住んでいる叔父の家族と一緒に暮らすことに。従姉妹でまだ幼いアナは、フリダを姉のように慕い、叔父夫婦もフリダを温かく迎えてくれますが、フリダはなかなか素直になれず、彼らと心を打ち解けられるまでには、時間がかかるのでした…。
 
まるで、トリュフォーの『大人は判ってくれない』の少女版!
子どもと少女のはざまくらいの、繊細でみずみずしい感性がていねいに描かれていて、カタルーニャの田舎の景色も美しくて、とても贅沢な映画でした。個人的にも、とっても好きなタイプの映画。
 
本作がデビューで、ベルリン映画祭をはじめ、世界の映画祭で新人監督賞などに輝いたカルラ・シモン監督の、自身の子どもの頃の体験がもとになっているのだそう。監督の自伝というだけあり、フリダの心がとてもリアルに描かれていました。
 
叔父夫婦がやさしい人たちなのはわかっていても、かまってほしくて、困らせてしまったり、従姉妹のアナはとっても愛らしいのに、お母さんのいない寂しさから、いじわるしちゃったり…。
 
フリダの淋しさや、戸惑いや、苛立ちが、まっすぐに伝わってきて、なんだか昔の自分を見ているようでした。少女の心に、ただただ共感。
  
こんな小さな宝もののような映画に出会えて、よかったです。