uzocotrip

フィンランドから鎌倉へ。暮らし、旅、映画にまつわる日々のメモ

67. 『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ

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2019年度の本屋大賞 受賞作。
「家族よりも、大切な家族」という帯に書かれたコピーに惹かれて、
瀬尾まいこさんの小説をはじめて読みました。
 
最近たまたま、身近なところで
養子縁組の話題を耳にすることが何度かあって、
いろいろな「家族」のことを、ぼんやりと考えていたところでした。
 
 
小説の主人公は、幼い頃に母を事故で亡くし、その後もさまざまな事情から、
リレーのように育ての親が次々に代わった経験を持つ、17歳の森宮優子。
 
彼女を中心に、高校生活の日々を描いた第一章と、
その数年後に結婚を控える優子が、育ての親をめぐる旅をする第二章からなる、あたたかな感動作です。
 
母親が2人、父親が3人。
17年間に、苗字が4回も変わったと聞くと、
それだけで、とても複雑で込み入った家庭の事情を想像するし、
幼い頃から苦労をしてきた、かわいそうな子だと思ってしまうかもしれません。
 
でも、そんな育った環境からはかんたんに想像しにくいほど、
主人公の優子は、明るくおおらかで、まっすぐな性格の女の子。
そして、優子の周りにはいつも、血がつながっていない彼女のことを、
どこまでも大切に思い、愛情を注いでくれる親たちがいました。
 
 
家族ってなんだろう。
親と子ってなんだろう。
 
ドラマチックな展開や、スリリングな事件が起きるわけではないものの、
いろんなカタチの家族のあたたかさに触れられる、愛にあふれた一冊。
最後は、優子を囲うすべての大人たちを思わずギュッとしたくなる、
すてきな結末です。