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フィンランドから鎌倉へ。暮らし、旅、映画にまつわる日々のメモ

72. ミニシアターのために、今できること

vol. 72 わたしがミニシアターで映画を見る理由

10代、20代と、たくさんの時間を映画館で過ごしました。
 
落ち込んでいるとき、
やり場のない気持ちを抱えているとき、
いつもひっそりと映画館に行って
気分を晴らしていました。
 
映画を見ていると、不思議なことに
まったくかけ離れた世界の物語なのに、
登場人物に、自分の一部を重ねたり、
友だちのように思えてくることがあります。
 
だから、遠くの国に景色に憧れたり、
思いっきり泣いて、笑ったり、
いろんな人のやさしさや悲しみに共感したり、
たまには、まわり道もわるくないと思えたり。
この世界のいろんなかたちの小さな光を見せてくれるのが、映画でした。
 
 
私のミニシアターの原体験として、とくに記憶に残っているのは
中学生の時に、渋谷のBunkamuraル・シネマで見た
初恋のきた道』と『リトル・ダンサー』です。
 
物語としてもすごく惹かれたのと、
映画の舞台が、『初恋のきた道』は中国の田舎の小さな村で、
リトル・ダンサー』はイギリスの炭鉱町。
どちらも、中学生の私にとっては遠い世界で、
自分とほとんど変わらない年齢の主人公がたくましく生きる姿に、
当時ものすごく感動したことを覚えています。
 
箱入り娘だった私の、
小さな世界が少しだけ広がった瞬間でした。
 
 
中学生の頃、親しい友人の影響で
映画に夢中になってから、
中学、高校、大学、社会人と
映画館は、わたしの暮らしの一部になっています。
 
思い出の映画は、数え切れないほどあるけれど、
その話はまた今度。
 
とくに、東京のミニシアターは、
あちこち足を伸ばして行きました。
 
 
大好きな映画館はいくつもありますが、
私の中で、思い出の映画館といえば、
吉祥寺のサンロード商店街のはずれにあった、
吉祥寺バウスシアター
 
爆音映画祭というイベントで有名で、
メジャーな作品からアート系のインディーズ映画まで、
洋画も邦画も、幅広いラインナップで愛されていた街の映画館です。
 
夕方になると赤く点灯する「BAUS TOWN」のネオンサインが印象的で、
その一角だけ時が止まったかのような、レトロな建物の2階にありました。
 
シネコンが増えていって、
巨大なスクリーンで映画が見れたり、
映像や音響の技術がどんどん進んでいっても、
やっぱり、またバウスで見たい。
そんな風に思える、居心地のよさがありました。
 
大小のスクリーンが3つ。
チケットは、番号順の自由席だから、
少し早めに行って、その日の気分で座席を選んだり、
映画の余韻に浸りながらサンロードを歩く、
吉祥寺駅までの帰り道も好きでした。
 
たまに油断して上映時間ぎりぎりに行くと
すごく後ろの方の番号だったりして。ありゃー。
座席指定制が普及した今では考えられないけれど、
そんなアナログなところも、けっこう好きでした。
 
他にも、今はなき、渋谷のシネマライズや、
昔の恵比寿ガーデンシネマもファンでした。
 
 
小さな街の映画館の、独特のマニアックさが好きで、
劇場スタッフがこだわってつくる宣伝の切り抜きとか、
もぎりの呼びかける声とか、
また次来るのが楽しみになる、ポップでおしゃれな映画のチラシとか、
ポップコーンの匂いとか、時には、おじいさんのいびきとか。笑
もう、愛しかありません。
 
 
おしゃれなものに溢れていて、
新しくてかっこいいものが次々と出てくる東京の街で、
そんな都会っぽさも飽きなくて楽しいけれど、
いつ来ても、ゆったりとした時間が流れていて、心がほっとする場所。
ずっと変わらずに、そこにあって欲しいもの。
それが、私にとっては街の映画館です。
 
いろんなことがあっても、
映画館で映画をみると、
「まあまあ、ぼちぼちいこうよ」とやさしく肩をたたいてくれるような、
そんな気持ちになって、癒やされるのです。
 
 
それが今、新型コロナウィルスのために、
全国のミニシアターが
休館や閉館のピンチになっています。
 
あんなに愛のある場所が、
もうこれ以上なくなって欲しくない。
 
小さな街の映画館で映画を見るひとときは、
他の何ものにも代えられません。
 
文章を書くことくらいしかできない私が
映画のために何かできないかなと
悶々とする日々ですが、
せめてもの思いで、リンクを貼ります。
 
どうか、映画とミニシアターに
明るい未来が待っていますように。
 
 
濱口竜介監督、深田晃司監督が立ち上げた、
全国の小さな街の映画館を応援するクラウドファンディング
5/14(木)まで募集中です

motion-gallery.net
 ▼ 他にも、映画館ごとの支援方法(会員募集、Tシャツ販売など)を入江悠監督がブログでまとめてくださっています

irie-yu.com
 ▼ 若手俳優さんたちが手がけるミニシアター支援・寄付Tシャツ!
とってもおしゃれで、私も買いました〜

suzuri.jp