30. 鎌倉のパン屋さん①みゆきぱん
この街に住んでよかったと思えることのひとつに、 おいしいパン屋さんがたくさんあること。
通いたくなるパン屋さんが近所に1軒あるだけでも、日常の小さな楽しみになるのに、鎌倉には、おっ!となる、愛されパン屋さんがいくつもあります。
パンの種類、かたさ、大きさ、お店の雰囲気もぜんぜんちがうから、その日の気分で食べたい味を探しに行くことにしています。
それでも、お店にはいった瞬間、ふわぁっとあたたかで、やさしい空気に包まれて、とびっきりのしあわせを感じてしまったのは、みゆきぱん。 由比ヶ浜通りにたたずむ、週3日しか営業していない小さなパン屋さんです。
店主のみゆきさんは、とってもあたたかな雰囲気の小柄な女性。みゆきさんのいる、みゆきぱんは、とびっきりハートフルで、こんな素敵なお店があることがうれしくてたまりませんでした。
こじんまりとした店内は、やさしいパンの香りが広がって。 手のひらサイズのパンがショーケースに、愛らしく並んでいて、そのとき500円しかもっていなかったので、3つだけ。かなり真剣に選んでしまいました。
毎週営業日は変わるから、FacebookかWebサイトで調べてからいかなきゃいけません。でも、そんな手間すらも愛しい、愛すべき鎌倉のパン屋さんです。
29. 鎌倉に暮らしはじめて
帰国して、あっとゆう間に、4か月。
東京にもどるなら、せめて住むところはこだわりたい。 自然をそばに感じられるところに、と、神奈川育ちの彼に懇願されて、帰国早々、鎌倉の町に暮らしはじめました。
30年近くずっと東京に住んできたわたしも、フィンランドの暮らしが思いの外、肌にあっていたので、日本でも、自然に囲まれたところに暮らしてみるのも良いかもしれないな、と思いました。 東京の便利さを、意識することがないくらいにまで慣れてしまっていたけれど、住む場所が変われば、その街が「スタンダード」になる。
わたしにとって、鎌倉といえば、鶴岡八幡宮で生まれて初めて大凶をひいた記憶と、ぎゅうぎゅうづめの小町通と、紫陽花と、小津安二郎の映画くらい。 つまりほとんど、本来の良さを知らないところからのスタートでした。 (でも、ここは言葉も通じるし、-25℃になることはないだろうから、きっと大丈夫!)
暮し始めて、すぐに感じたこと。 鎌倉の人のものさしは、東京の人のものとは、ちょっと違うようです。 そして、穏やかでのんびりとした空気は、どことなくフィンランドと似ているものがあります。
こだわりをもって、人生を楽しむこと。 暮らしを大切にすること。心の声に敏感であること。
これから、たっぷりと時間をかけて、この町のいいところ探しをしていきたいと思います。
28. 街の中心に、くつろぎの広場
ヘルシンキ中央駅のすぐ近くにあるキアズマ現代美術館。 毎月第1金曜日の夕方は無料で入れるので、ちょうど最近はじまったばかりのブラジル人アーティスト、エルネスト・ネト(Ernesto Neto)の企画展を見に行ってきました。
いっけん編み物のようにも見えるアート作品ですが、こちら布の切れはしを結って作られた、美術館ワンフロア分のピクニック広場なのです。
ハンモックや、テント、壁にも植物や動物のアートがされていて、 春めいた温かな空気の流れる会場でした。 まだまだ冬の寒さがのこっているフィンランドの人たちにとって、 春夏のピクニックなんて、たまりません!
テントをのぞいてみると、こどもから大人まで、 たくさんのフィンランド人たちが、ここぞとばかりにくつろいでいる光景が目に入ってきました。 足をのばしたり、寝っ転がって天井をみあげながらおしゃべりをする人たち(わたしたちも)、会場においてあるギターを弾いてみる人、たのしそうにかけまわる子どもたち。 外はまだまだ寒いのに、とってもおだやかで、心の休まる空間でした。
いつか日本にも大きなピクニック広場、巡回してこないかな~。
27. フィンランドの暮らしに教わった3つのこと
約9か月のフィンランド暮らしも、もうすぐおしまい。
ゆったりとした時間のなかで、たくさんのことを考えました。
生まれ育った東京の街や、昔住んでいたフランスのパリとはまったく似ていない、北欧フィンランドのヘルシンキに暮らしてみて、すごく新鮮だったことも、しみじみいいなと感じたこともたくさんありました。
とくに大きかったなと思うことを3つ。
●ほんとうの意味で、「平等」ということ
外国人であっても、とっても居心地がいいし、
年齢や、職業や、出身地や、性別で、色眼鏡でみられることもなく、
個人が個人として、対等に見られているような実感がありました。
世界中をみわたしても、こんな国ってなかなかありません。
フィンランドの人たちは目がとっても澄んでいて、
邪気を感じないといったらちょっと大げさかもしれませんが、
大人でも、見ためはちょっといかついパンキッシュな人たちも、
やさしい目をした人が多いのです。
そんなところにも、社会の空気が与える影響があるのかもしれません。
●自然によりそって暮らすこと
夏はたくさん太陽を浴びて、日が長いぶん、よく運動をしたり、よく遊んで、
冬は暗くなるのも早いので、お家のなかで暖をとって、ゆっくり過ごす。
シンプルだけど、ていねいな暮らし。自然や、人間のからだとしっかり向き合って生きている人たち。
ヘルシンキの街で暮らすようになってから、
緑や草花の色やかたち、海や湖など、自然の変化や、季節の移り変わりに、よく気がつくようになりました。
●シンプルでじゅうぶん
暮らしがシンプルになってくると、自分にとって欠かせないものや
意外となくてもやっていけるものが、はっきりとしてきます。
そうすると、あれもないこれもない、とストレスに感じるのではなくて、これがあればあれもできる、と工夫したり、プラスのきもちに変わっていくことに気がつきました。
ほんとうにやりたいこと、大切なものが
ひとつふたつ、はっきりしていると、ずいぶんスッキリと暮らせるようになります。
フィンランドの飾らない暮らしのなかで、
こころがヘルシーになった気がします。
*
フィンランドに教わった、3つの暮らしやすさのひみつ。
東京に帰ってからも、たまに思い出そうと思います。
26. レトロさがちょうどいい、坂の上のリスボン
2週間後に帰国をひかえ、
フィンランド生活最後の旅に、ポルトガルのリスボンへ行ってきました。
あたたかいお天気と、
おいしいごはんを楽しみに。
10年前、家族といっしょにパリから足を伸ばしたときは
サン・ジョルジュ城からの眺めはたしかにきれいだったけれど、
ほかに記憶にのこっているのは、観光名所のよれよれのエレベーターにのったこと、ファドの音楽を聴いたこと、フランスより田舎だなと感じたこと。
当時高校生でまだまだこどもだったわたしは、
この街の魅力に気づくことができませんでした。
10年ぶりに、じぶんの足でおとずれたリスボンは
とにかくかわいらしくって、町全体にどこか懐かしみを感じる、
親しみのわく街でした。
パリのモンマルトルと似た旧市街、石畳の路地、
魔女の宅急便のような、坂の上から見下ろす景色、
南欧らしいカラフルな色づかいと、庶民的な雰囲気。
アパートの壁やインテリアなど、あちこちで目にするきれいなアズレージョ(タイル)。
ラテン系の小柄なおじちゃんやおばちゃんたち。
坂道をかけおりる、レトロなちっちゃいトラム。
南フランスのニースを、もっともっと下町にした感じの街並みで、
町歩きがとにかく楽しいところでした。
すっかりこころを奪われたのが、ポルトガルの料理!
日本以外で、こんなに日本人の口にあう料理はないのでないかと思うくらい、
この国のごはんはとってもおいしかったです。
地中海の新鮮な魚介をつかったお料理も
オリーブオイルをたっぷり使っているものの、
イタリアンやフレンチほど、こってりとはしていなくて。
スペイン料理とも、またひと味違った、ポルトガルのごはん。
地球の裏側で、こんなに日本と似た味に出会えるなんて、
いっきにポルトガルへの親しみがアップ…!
いつかまた、だいすきな人たちを連れて、おとずれたい街です。