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フィンランドから鎌倉へ。暮らし、旅、映画にまつわる日々のメモ

56. おふくろの味

だれかと一緒に暮らしていると、
ごはんは作ってる?どんな料理つくるの?
と聞かれることがよくあります。
 
そんなとき、家事のなかで料理だけは好きなので、 ごはんはいつも家で作るのですが、 ”どんな料理”をどう答えたらよいのか、いつも返事に困ってしまいます。
 
よく作るのは
唐揚げ
鶏肉のトマト煮込み
ラタトゥイユ
ニース風サラダ
にくじゃが
煮魚、焼き魚
ポテサラ
スパイスのカレー
キャロットラペ
しょうが焼き 
ポタージュ
 
エルブ・ド・プロヴァンスという南仏のハーブが大好きなので、 どんな料理にもハーブをたっぷり。 和食も、フレンチも、アジアンも、ごっちゃまぜにしていつも食卓にならんでます。どれもこれも、実家でよく親が作ってくれたものです。
 
だけど、フランスの家庭料理などと人にいうと、 たいてい反応にも困られるので、「和食とか」とあいまいに答えることが多いです。
 
それで、この間、ママに「うちの料理って何料理?」ときいてみたら、
びっくりするほどあっさり、
「うちのごはんよ。おふくろの味。」という返事がかえってきました。
 
お ふ く ろ の 味!
 
その一言で、ずっと引っかかっていたものが すとんと腑に落ちました。
 
お客さんがくるときも、 とりわけ、こじゃれたものは作らないし、 盛りつけをおしゃれにこだわったりもしません。
肩ひじはった料理は、つくる方も、もてなされる方も、ちょびっと疲れてしまうから。
 
インターネットでレシピを調べたり、
料理本を見るのもたのしいけれど、
やっぱりたどりつくのは、いちばんホッと落ち着くのは、いつもの味。
こどものころから食べてきた、わたしにとっておいしいお家のごはん。
 
おふくろの味を、もっともっと、おいしく作れるようになりたいな。
なんて、食欲が高まる秋の深まりはじめた季節に思うのでした。

55. 『三度目の殺人』TOHOシネマズ上大岡

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先週末に公開したばかりの是枝裕和監督の最新作を、さっそく観に行ってきました。
ふだんはあまりサスペンスを見ないわたしも、大好きな是枝さんの作品は、ただの推理ドラマに終わらない、もっと深い何かが描かれているはず!と期待を込めて、鑑賞。
 
本作も、俳優陣に、脚本に、とっても素晴らしかったです。
ヴェネチア映画祭では賞をとりませんでしたが、見る人に考える余地をのこして、まるで観客を試しているかのような作品、個人的にはすごく好きでした。
 
あらすじは、2度目の強盗殺人罪で死刑勧告を受けている容疑者の三隅(役所広司)をどうにか減刑させようと、敏腕弁護士の重盛(福山雅治)が容疑者との面会を重ね、裁判の戦略をねっていく法廷サスペンス。
 
裁判は、真実を明らかにする場ではなく、利害を調整する場として、あくまでも戦略重視で仕事をすすめてきた重盛だが、犯行の動機を探っていくうちに、会うたびに言うことや態度をころころと変える三住に、次第に翻弄されていく。
 
三隅は誰かを守っているのか、誰かを裁こうとしているのか、本当は罪を犯していないのか、あるいは、空っぽの”器”なのかーーー。
 
 
役所広司のド迫力、圧巻!!!
 
役所さん演じる三隅を見ているうちに、どの三隅も”真実”のように思えてきてしまって、重盛と同じように、わたしもどつぼにはまってしまいました。
 
「見て見ぬふりをしたくないから」
「ここ(法廷)では、だれも本当のことを言わない」
 
心に刺さる言葉がぽつぽつ。
きっとこれは法廷にかぎったことではなくて、
わたしたちの日常が問いかけられているようで、
見終わってからも映画の余韻で頭がぐるぐるしていました。

54. 『ブランカとギター弾き』シネスイッチ銀座

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春くらいに劇場の予告編で、女の子が盲目のおじさんのギターにあわせて歌っている映像をみて、女の子とおじさんのほっこり心温まる旅ものがたりだろうと思って、ほんの甘い気持ちで映画館へ。 
 
映画祭のワールドシネマ部門とかで上映されそうな、エキゾチックな映像と音楽なのに、監督が日本人というのも気になっていました。
 
舞台はフィリピン・マニラのスラム街。
身寄りのないブランカは、他のスラムの子どもたちと同様に、観光客や大人たちからお金を盗んでは、食べものをもとめて、街をふらつき回る日々。拾ってきた布切れやガラクタで作った小さなおうちを寝床に、母親のいる生活を夢見ている。
 
ある日テレビで、女優が孤児を養子にしたというニュースを目にして、ブランカは、大人が子どもをお金で買えるなら、子どもだって”親”をお金で買えるはず!と思いつき、「母親買います!」という広告を街中に貼ってまわる。そんななか、盲目のギター弾きピーターと出会う。
 
はじめは、目の見えないのをいいことにピーターのお金を盗もうとしたブランカだが、ブランカを責め立てることもなく、どこまでもおだやかなピーターのやさしさに触れ、2人は一緒に母親探しの旅に出るーーー。
 
 
10歳にもならない、小さな子どもたちが、生きるために盗みやひったくりを当たり前にしているスラムの界隈。それはもうほとんどゲーム感覚のようで、ほんのいたずらのように悪いことをして暮している子どもたち。他に生きる術のない彼らの、彼らなりの必死な生き抜き方を目の当たりにして、胸がぎゅうっとなりました。
 
ほんの少し離れた場所では、同じ年頃の子どもたちが母親に手を繋がれていて、子どもらしい日々を送っているのに。
 
フィクションだけれど、この映画の世界はフィクションじゃない。スクリーンに映し出された映像は、現実にある世界だと思えば思うほど、切なく、悲しいものでした。
 
ゴミの山に生きる子どもたちの無邪気な笑顔や、
きらきらした瞳が忘れられません。

53. 鎌倉のパン屋さん②ライ麦ハウスベーカリー

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すこし前になりますが、7月の中頃、小町の路地裏にちいさなフィンランドのパン屋さんができました。
 
その名も「ライ麦ハウスベーカリー」。
フィンランド人のご主人と日本人の奥さまの、パン職人のご夫婦がやっているお店です。
 
ライ麦パンはフィンランドの代表的なパン。シンプルなお店の名前も、フィンランド語を使わないあたりが、逆にフィンランド人がやってるんだなという感じが伝わってきます。
 
住んでいる場所に、自分とつながりがあるものが増えていくのは、やっぱりうれしい。フィンランドでの暮らしがあってこその、今だなと、ときどきふと思います。
 
鎌倉にフィンランドのパン屋さんができたと聞いて、オープン当初さっそくお店にお邪魔してきました。
 
鎌倉駅からは徒歩5分ほど。何度か行ったことのあるイタリアンビストロGALATA(ここもおいしい)のならびに、白とブルーが基調の、フィンランドらしい佇まいのパン屋さんを発見!
 
お店にはシナモンロールをはじめ、カレリヤンピーラッカ(ミルクのお粥をライ麦でくるんだパン)、円盤の形をしたライ麦パンに、オープンサンドなど、フィンランドのパン屋さんを思わせる代表的なパンがたくさんならんでいました。
なつかしい〜〜〜!!
 
鎌倉らしさをブレンドして、カレリヤンピーラッカはしらす味だったり、この店ならではのオリジナリティも散りばめて。お店の奥には、緑のお庭を眺めながらパンが食べられる、カウンター席のイートインスペースもあります。
 
そして、このしらすやサーモン味のカレリヤンピーラッカがとってもおいしくてびっくり!シナモンロールや、ほかのプッラ(菓子パン)もおいしかったけど、フィンランドに、しらすはないにしてもサーモン味とか、なんで今までなかったんだろうというくらい、マッチしていておいしかったです。
 
お店を鎌倉に出したのは、フィンランド人の旦那さんの直感だったそう。お店を開く前に、おふたりで鎌倉に観光できたときに、自然にかこまれた街の雰囲気をご主人の方がすっかり気に入って、お店を開くなら鎌倉がいいと決めたそうです。
そんな話を聞いて、ますます親しみが湧いてしまいました。
 
とても感じのいい、気さくな店主ご夫妻がつくるフィンランドパン。これからのお店づくりが楽しみです。

52. 加古川の靴下工場見学

彼の大学時代の先輩が、実家の家業を継ぐため、神奈川を離れて昨年地元の兵庫に帰っていったので、遊びに行ってきました。
 
兵庫県加古川市。神戸からJRに乗って、明石の手前にある加古川駅で下車。
その日は、先輩がドライバーになって、加古川案内をしてくれました。
やっぱり旅は住んでいる人に案内してもらうのがいちばん楽しい!
 
駅から車で30分も走ると、見渡す景色は一気に田舎に。のどかな川が流れ、田園風景が広がり、昔ながらの日本家屋がこのエリアにはたくさん残っていました。
 
加古川市は、奈良に次いで、全国で第2位の靴下生産量をしめる地域なんだそうです。今回せっかくなので、先輩のご実家の靴下工場を見学させてもらいました。
 
平屋の工場には、ずらりと昔ながらの機械が並んでいて、この日も機械の一台一台がせっせかと靴下を編んでいました。機械の動きをじーっと見ているだけでもおもしろい♪ 機械からすぽっと靴下が出てくる瞬間がたまりません。
 
最先端のデジタルの機械もあるけれど、小さな故障のときには昔からの機械の方がすぐに手直しできるし、機械自体も長持ちするのだと。便利になっていくように見える世の中でも、昔の人が使っていたもの、昔の人の知恵はあなどれないんだなとはっとさせられました。
 
靴下のしあげは人の手で、ていねいに。
 
安くてすぐにダメになってしまうものや、おしゃれだけど日常使いにしては高すぎるものではなくて、からだのことを考えて丁寧に作られた”ちょっといいもの”を、手の届く価格で。
 
そんな方針もとってもやさしくて、なんて温もりのあるお店なんだろうと、すっかり惚れ惚れしてしまいました。こういうお店を、ずっと応援していきたいです。
 
加古川の工場で作った靴下は、工場併設のアトリエ(白基調でとってもおしゃれな内装にびっくり)や、オンラインショップで販売してるほか、この春、神戸に直営店がオープンしたばかりだそうです。冷え性のわたしは、この日冷えとり靴下と冷えとりパンツをお買い上げ。シルク100%でも1足700円程度という良心的なおねだんでした。
 
ひいおじいちゃんが創業してから、今は3代目の靴下屋さん。
4代目になったら、どんな風にますます素敵になっていくのか、今からとっても楽しみです!
 

www.hietori-socks.com